ザウバー・モータースポーツがイギリスに新しい技術センター『ザウバー・モータースポーツ・テクノロジー・センターUK』を設立すると発表したことを受けて、複数のF1チームが、ザウバーに対する予算制限の例外措置を取り消すよう求めている。
ザウバーがイギリスに技術センターを設立すると発表したことは、ザウバーを買収して2026年からF1に参戦するアウディが、経験豊富なF1エンジニアをスイスに連れてくることの難しさを十分認識していることの証拠だ。技術センターを開設することで、スイスのチームはモータースポーツ産業の中心地であるシルバーストン周辺からより多くの人材を引き付けることができるようになる。これがアウディにとってよい動きであることは、その地域に拠点を置く多くのエンジニアやデザイナーの反応が明確に示している。
キャデラックに加え、現在はアウディも盛んに人材採用を行っている。この地域に拠点を置くメルセデス、レッドブル、アストンマーティン、アルピーヌ、ウイリアムズ、また拠点の一部があるハースとRB/レーシングブルズといったF1チームは、若い人材が新しい組織でより上の役職やより高い給与を得ることを防ぐために今や厳重な警戒を敷いているが、こうしたライバルチームが現在アウディの動向に大きな関心を寄せているのにはもうひとつの理由がある。
FIAは、他の9つのF1チームの意に反して、ザウバーの予算上限を引き上げることに同意した。スイスで働いて生活するために支払わなければならない給料が、イギリスで支払う必要のある給料よりもかなり高いことを認めたのだ。しかし今、アウディのエンジニアの多くがイギリスのシルバーストン地域を拠点とする予定となることが明確になっている。したがって彼らの給与はイギリスを拠点とする各チームと同程度になるだろう。
そのため、すでに複数のチームの代表者と、FIAのシングルシーター担当ディレクターであるニコラス・トンバジスとの間で初期の協議が行われている。一部のチームはザウバーに対する例外措置の取り消しを要求している。一方で他のチームは、チームの運営全体を包括的に扱うのではなく、実際にスイスと、アウディのパワーユニット拠点であるドイツにいるスタッフの数に直接関連付けて、コスト上限に比例配分を適用することを望んでいる。
この特例が、アウディが従業員の給与について負担しなければならないコストを公正に反映したものにするには、適切な係数が適用されるように、ヒンウィルとノイブルク、そして新しいイギリス拠点に何人の従業員が働いているかをFIAが常に把握しておく必要がある。F1チームはほぼ毎日のように人材を採用したり解雇したりしているため、当然ながらこれは非常に複雑な会計作業となるだろう。そのため、あるチーム代表はこの状況について、「FIAが自ら招いた厄介な問題であり、直ちに解決すべきだ」と述べている。一方でアウディの情報筋はこの件に関して、「連盟と建設的な話し合いが進行中だ」と語った。
ザウバー・モータースポーツは、この新しい施設を開設することで、“モータースポーツ・バレー”における存在感を強化し、トップクラスの専門家と協力して、アウディのF1プロジェクトのために地元の優秀なエンジニアを引き付けるプラットフォームを確立することを目指している。この取り組みは、F1プロジェクトの技術力を強化し、拡大するという長期戦略の重要な要素だ。
また現在、ザウバー・モータースポーツはビスター、シルバーストーン、ミルトン・キーンズを含むモータースポーツ・バレー内で候補地を検討している。目標は、2025年夏までにイギリステクニカルセンターを稼働させることだ。
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